第141章 選ぶ権利はない

「別に……ただ、君の顔、どこかで見た気がしてさ。俺、佐藤家の分家なんだ。十年前、家の言うことを聞かなくて――放り出された」

口ぶりはあくまで軽い。けれど南坂海乃は知っている。佐藤家みたいな一族から離れて、ひとりで生きるのが簡単なはずがない。

話している最中も、海乃のスマホはぶるぶると落ち着きなく震え続けた。

仕方なく画面を確認すると、やはり太田咲雪からだ。

『当時の真相、知りたくないの?』

釣りだろう。そう思いながらも、指が止まる。迷いが胸に差した、その瞬間――

『一人で来て。誰にも言わないで』

海乃は少し考え、結局「行く」ほうを選んだ。立ち上がり、トイレに行くふりをしてその場...

ログインして続きを読む